出会いと別れ、その狭間にあるもの
10月16日 5時29分
同じ番組を担当している女性のスタッフから一通のメール。
愛の間違いメールであった。
その子の彼氏さんと俺は名字がほとんど同じ。それが理由か。
しかし、俺は早朝ということもあり、気づかずに惰眠を貪る。
10月16日 8時過ぎ
番組取材先で美味しい料理をご馳走になる夢を見ていたら、グーパンを喰らう。
いいパンチだった。
唇が切れ、美味しいお肉の味ではなく、鉄の味が口の中に広がり目が覚める。
気がつくと、彼女が朝8時から洗濯物をたたんでいた。
というか、洗濯物をたたむ姿を初めて見た。
彼女に殴られたのか、それとも寝ぼけて何処かにぶつかったのか、
分からないまま彼女に挨拶をする。
しかし、彼女は俺に背を向けて、黙々と洗濯物をたたみ続ける。
「お忙しいところスミマセン。僕、口の中が血だらけなんですけど、何か僕にしましたでしょうか?」
「ヤイヤイ!何シカトしてんだ。洗濯物なんか後にしやがれ。俺に何かしやがったか、テメェ」
言葉は現実と少々異なりますが、こんな感じでテンションを変え、
何パターンかで、彼女のご機嫌を伺ったんですが、全て無視。
彼女が怒っているということだけは、伝わってきた。
生理かしら、と勝手に結論づけて、そんな日の彼女には何を言ってもダメだと、
今日は「シン・シティ」を観に行く予定だったけど、これじゃあ無理だなと、
彼女には触れずに、録画した「松紳」を見ることにした。
10月16日 9時過ぎ
松っちゃんと紳助の軽快なトークを楽しみながら、ふと目をやると、
彼女はまだ洗濯物をたたんでいた。
右にあった服をたたんで左に。今度は左にあった服をたたんで右に。
砂のお城を作っては壊す。作っては壊す。それに似た非生産的な作業。
あ、ヤバイって感じた。
10月16日 10時36分
会話もないまま、不安な空気だけが部屋を包んで早1時間。
「いいとも」を見ていても、内容が全然頭に入らない。
タモさんのいつまで経っても変わらない、あの笑いが全然耳に届かない。
ふと電話が鳴る。
ディスプレイには番号しか表示されていない。登録してない番号だ。
仕事かもしれないので電話に出る。
大学生時代のバイト先の女の子であった。
8月にケータイを紛失したこともあり、ここ1年ほど連絡を取っていなかった。
どんな内容かは分からないまま、とりあえず不穏な空気に包まれた部屋を出る。
なんてことはない、飲みの誘いの電話であった。
「久しぶり。突然だけど来週の金曜、ヒマ?」
「よせやい。オイラに1週間後の予定を聞くなんて野暮だぜ。休みかどうか当日にならないと分かりません」
そんな会話をして電話を切る。
すると、ディスプレイにメール確認の画面が写し出された。
他の人のケータイもそうだろうが、
俺のケータイはネット見てたり、メール打ったりしているときに着信があると、
電話が終わったあとに、それぞれネット、メールの画面に戻るのだ。
そこには送り先を間違えた仕事スタッフの愛のメールが写し出されていた。
すでに既読扱いになっている。
ここで謎が解けた。
早朝にグーパンを喰らって目が覚めたこと。
早朝から何時間も彼女がひたすら洗濯物をたたんでいること。
彼女が口をきいてくれないこと。
全くカワイイ奴だぜ。嫉妬してやがる。
はにかみながら彼女のアパートに戻る。
ドアを開くと、彼女はまた背を向けて洗濯物をたたんでいた。
俺がソファに座っていたときは玄関の方を向いていたのに、今度はベランダの方を向いてやがる。
うむ、やはり、そうだ。原因はメールだ。カワイイ奴だぜ。嫉妬してやがる。
誤解であると教えてやろう。
俺が愛しているのはお前だけだと安心させてやろう。
すると、俺が入る前に彼女は俺の方を振り返った。そして言った。
「出ていって下さい。はい、如実さんの服です」
いやいやそれは誤解ですよと俺は言った。彼女は聞く耳持たなかった。
「じゃあ今の電話は誰ですか。そのメールの女の子でしょ」
いやいやめっちゃブスですよ。テレビ業界で裏方やってる女に美人はいませんよ。
と言うか、そもそも別の人間です、と俺は言った。
彼女は聞く耳持たなかった。
「ブスかどうかは問題じゃない。とりあえず出ていって下さい」
「そしてここにはもう2度と来ないで下さい。今後、私に近づいたら警察呼ぶよ」
どこかで聞いたことある台詞 だなと思いながらも、彼女の決意が恐ろしくなった。
朝からずっとたたんでいたのは俺の服だったと、なぜ気づかなかったんだろう。
なぜ呑気に「松紳」「笑っていいとも」をハシゴ見したんだろう。
笑ってる場合じゃなかったですよ、俺。
とりあえず荷物全部は無理なんで数回に渡って運ばさせて下さい、また来ますと俺は言った。
案外素直に引き下がった。
「私、これから遊びに行くから無理。玄関の外に置いていって」と彼女は言いました。
勘弁して下さい、僕の大事なお洋服とか盗まれちゃいますよ、と俺は言った。
2人で買ったジッポなんか盗られますよ?と俺は言った。
「別にいいんじゃない」と彼女は言いました。
僕は泣きながら下北沢の駅に向かいました。
10月16日 14時10分
目を開けると、そこは如実の自宅。全ては夢でした。
現実は5時29分のメールをいつか分からないが俺、確認してました。
それから2度寝したもんだから、そのメールを踏まえた上での夢を見たようです。
ただ現実の出来事とリンクしているように見えて、決定的に矛盾した点がひとつ。
そうだ。俺に今、彼女なんていないじゃん。
あれ誰だよ。
夢の中でも幸せになれず、起きたあともなんかヘコむ感じの夢でした。
現実と夢がこんな風にリンクしていると、もうどっちが俺にとっての現実か分からなくなりますね。
まぁ、この夢 しかりこの夢 しかり、
俺は夢の世界でも幸せにはなれないの確定ですが。 終
同じ番組を担当している女性のスタッフから一通のメール。
愛の間違いメールであった。
その子の彼氏さんと俺は名字がほとんど同じ。それが理由か。
しかし、俺は早朝ということもあり、気づかずに惰眠を貪る。
10月16日 8時過ぎ
番組取材先で美味しい料理をご馳走になる夢を見ていたら、グーパンを喰らう。
いいパンチだった。
唇が切れ、美味しいお肉の味ではなく、鉄の味が口の中に広がり目が覚める。
気がつくと、彼女が朝8時から洗濯物をたたんでいた。
というか、洗濯物をたたむ姿を初めて見た。
彼女に殴られたのか、それとも寝ぼけて何処かにぶつかったのか、
分からないまま彼女に挨拶をする。
しかし、彼女は俺に背を向けて、黙々と洗濯物をたたみ続ける。
「お忙しいところスミマセン。僕、口の中が血だらけなんですけど、何か僕にしましたでしょうか?」
「ヤイヤイ!何シカトしてんだ。洗濯物なんか後にしやがれ。俺に何かしやがったか、テメェ」
言葉は現実と少々異なりますが、こんな感じでテンションを変え、
何パターンかで、彼女のご機嫌を伺ったんですが、全て無視。
彼女が怒っているということだけは、伝わってきた。
生理かしら、と勝手に結論づけて、そんな日の彼女には何を言ってもダメだと、
今日は「シン・シティ」を観に行く予定だったけど、これじゃあ無理だなと、
彼女には触れずに、録画した「松紳」を見ることにした。
10月16日 9時過ぎ
松っちゃんと紳助の軽快なトークを楽しみながら、ふと目をやると、
彼女はまだ洗濯物をたたんでいた。
右にあった服をたたんで左に。今度は左にあった服をたたんで右に。
砂のお城を作っては壊す。作っては壊す。それに似た非生産的な作業。
あ、ヤバイって感じた。
10月16日 10時36分
会話もないまま、不安な空気だけが部屋を包んで早1時間。
「いいとも」を見ていても、内容が全然頭に入らない。
タモさんのいつまで経っても変わらない、あの笑いが全然耳に届かない。
ふと電話が鳴る。
ディスプレイには番号しか表示されていない。登録してない番号だ。
仕事かもしれないので電話に出る。
大学生時代のバイト先の女の子であった。
8月にケータイを紛失したこともあり、ここ1年ほど連絡を取っていなかった。
どんな内容かは分からないまま、とりあえず不穏な空気に包まれた部屋を出る。
なんてことはない、飲みの誘いの電話であった。
「久しぶり。突然だけど来週の金曜、ヒマ?」
「よせやい。オイラに1週間後の予定を聞くなんて野暮だぜ。休みかどうか当日にならないと分かりません」
そんな会話をして電話を切る。
すると、ディスプレイにメール確認の画面が写し出された。
他の人のケータイもそうだろうが、
俺のケータイはネット見てたり、メール打ったりしているときに着信があると、
電話が終わったあとに、それぞれネット、メールの画面に戻るのだ。
そこには送り先を間違えた仕事スタッフの愛のメールが写し出されていた。
すでに既読扱いになっている。
ここで謎が解けた。
早朝にグーパンを喰らって目が覚めたこと。
早朝から何時間も彼女がひたすら洗濯物をたたんでいること。
彼女が口をきいてくれないこと。
全くカワイイ奴だぜ。嫉妬してやがる。
はにかみながら彼女のアパートに戻る。
ドアを開くと、彼女はまた背を向けて洗濯物をたたんでいた。
俺がソファに座っていたときは玄関の方を向いていたのに、今度はベランダの方を向いてやがる。
うむ、やはり、そうだ。原因はメールだ。カワイイ奴だぜ。嫉妬してやがる。
誤解であると教えてやろう。
俺が愛しているのはお前だけだと安心させてやろう。
すると、俺が入る前に彼女は俺の方を振り返った。そして言った。
「出ていって下さい。はい、如実さんの服です」
いやいやそれは誤解ですよと俺は言った。彼女は聞く耳持たなかった。
「じゃあ今の電話は誰ですか。そのメールの女の子でしょ」
いやいやめっちゃブスですよ。テレビ業界で裏方やってる女に美人はいませんよ。
と言うか、そもそも別の人間です、と俺は言った。
彼女は聞く耳持たなかった。
「ブスかどうかは問題じゃない。とりあえず出ていって下さい」
「そしてここにはもう2度と来ないで下さい。今後、私に近づいたら警察呼ぶよ」
どこかで聞いたことある台詞 だなと思いながらも、彼女の決意が恐ろしくなった。
朝からずっとたたんでいたのは俺の服だったと、なぜ気づかなかったんだろう。
なぜ呑気に「松紳」「笑っていいとも」をハシゴ見したんだろう。
笑ってる場合じゃなかったですよ、俺。
とりあえず荷物全部は無理なんで数回に渡って運ばさせて下さい、また来ますと俺は言った。
案外素直に引き下がった。
「私、これから遊びに行くから無理。玄関の外に置いていって」と彼女は言いました。
勘弁して下さい、僕の大事なお洋服とか盗まれちゃいますよ、と俺は言った。
2人で買ったジッポなんか盗られますよ?と俺は言った。
「別にいいんじゃない」と彼女は言いました。
僕は泣きながら下北沢の駅に向かいました。
10月16日 14時10分
目を開けると、そこは如実の自宅。全ては夢でした。
現実は5時29分のメールをいつか分からないが俺、確認してました。
それから2度寝したもんだから、そのメールを踏まえた上での夢を見たようです。
ただ現実の出来事とリンクしているように見えて、決定的に矛盾した点がひとつ。
そうだ。俺に今、彼女なんていないじゃん。
あれ誰だよ。
夢の中でも幸せになれず、起きたあともなんかヘコむ感じの夢でした。
現実と夢がこんな風にリンクしていると、もうどっちが俺にとっての現実か分からなくなりますね。
まぁ、この夢 しかりこの夢 しかり、
俺は夢の世界でも幸せにはなれないの確定ですが。 終
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